大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和57年(行ウ)9号 判決

原告 大東京信用組合

右代表者代表理事 関水誠

右訴訟代理人弁護士 河和松雄

右訴訟復代理人弁護士 平山隆英

右訴訟代理人弁護士 河和哲雄

同 住田昌弘

同 河和由紀子

被告 東京法務局調布出張所登記官 佐藤照夫

右指定代理人 井上弘幸

同 岩井明広

主文

1  被告が別紙目録(二)記載の建物について昭和五六年八月一九日受付第二六八〇一号をもってした建物表示登記の取消しを求める訴えを却下する。

2  被告が同目録(一)1記際の建物について昭和五六年八月一九日受付第二六七九九号をもってした区分建物抹消登記を取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

一、原告の請求の趣旨

1. 被告が別紙目録(二)記載の建物について昭和五六年八月一九日受付第二六八〇一号をもってした建物表示登記は、これを取り消す。

2. 主文2、3項同旨

二、被告の答弁

1. 原告の請求をいずれも棄却する。

2. 訴訟費用は原告の負担とする。

第二、当事者の主張

一、原告の請求の原因

1. 原告は、昭和五二年三月八日株式会社大翔産業(旧商号不死鳥不動産株式会社、以下「大翔」という。)との間において信用組合取引契約を締結し、同年一二月三一日同社に対する債権担保の為高橋忠雄(以下「高橋」という。)所有の別紙目録(三)記載の建物(以下「本件旧建物」という。)及びその敷地である世田谷区船橋六丁目九二五番三四所在宅地一三八・一四平方メートル(以下「本件敷地」という。)に別紙目録(四)記載のとおりの根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)設定契約を締結し、昭和五三年一月一九日右目録記載のとおりの根抵当権設定登記(以下「本件根抵当権設定登記」という。)を経由した。

2. ところが、高橋は、昭和五六年一月ころ、本件根抵当権設定登記の経由当時は一棟の建物であった本件旧建物に接して約五・三一平方メートルの建物を建築し、本件旧建物と右新築に係る建物とを区分所有建物とする登記を経由した。その結果、本件旧建物は、別紙目録(一)1記載のとおり区分建物の専有部分1の区分所有建物として登記され(以下このように登記された本件旧建物を「甲建物」という。)、本件根抵当権は、甲建物上に存することとなった。高橋は、昭和五六年八月一九日甲建物及び別紙目録(一)の区分建物の専有部分2の区分所有建物(以下この建物を「乙建物」という。)とにつき、双方建物の「合併」を原因として東京法務局調布出張所に対し区分建物抹消登記申請及び合併後の建物である別紙目録(二)記載のとおりの建物(以下この建物を「丙建物」という。)について表示登記の申請をした。

被告は、同日右各登記申請をいずれも受理し、同年八月二五日右各登記をし、甲乙各建物の登記簿はいずれも閉鎖された(区分建物抹消登記は、同月一九日受付第二六七九九号(以下「本件抹消登記」という。)であり、建物表示登記は、同日受付第二六八〇一号(以下「本件表示登記」といい、これと本件抹消登記とを併せて「本件処分」という。)である。)。

その結果、原告が甲建物について有していた本件根抵当権設定登記はその不知の間に消滅した。

3. 本件処分には次のとおりの違法事由がある。

(一)  本件処分はいずれも「合併」を原因としてされているが、不動産登記法(昭和五八年法律第五一号による改正前、以下「不登法」という。)九三条の四によれば、所有権の登記以外の権利に関する登記ある建物については合併をすることができないものとされているから、本件処分は右規定に違反する。

(二)  仮に本件処分が、区分建物の隔壁を除去するなどの工事が施されたことによる甲乙各建物の「合棟」又は「建物の合体」を原因としてされたものとしても、本件処分には次のとおりの違法事由がある。

(1) 乙建物は、本件処分のされる約七か月前の昭和五六年一月一七日高橋によって築造されたものであるが、

ア 甲建物の西南隅のL字型の壁面に沿って設置された僅か五・三一平方メートルのL字型の木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建の工作物であり、

イ 築造当時から甲建物と完全に接合していて、これとの境界部分に乙建物としての独自の障壁が設置されておらず、甲建物の外壁をもってその障壁とされており、電気設備についても何ら独自の設備を有せず、水道設備、台所、トイレットなども設置されておらず、甲建物の諸設備を利用するようになっていたものであり、事務所として登記されているが、事務所としても独立の利用価値を有するとは認められないものである。現に甲乙各建物はいずれも高橋の所有であって同人によって一体として利用されていたものであり、

ウ 居宅である甲建物のある一筆の本件敷地内に甲建物と接合して設置されたもので、周囲はブロック塀で囲まれ、独自の出入口も設けられておらず、乙建物から直接公道へ出入りすることができない(仮に被告の主張のように築造当時は乙建物に出入口が設置されていて合体時にこれが閉鎖されたものであるとしても、乙建物から公道へ出るには甲建物西北面の庭を通行しなければならないから、右出入口の設置をもって乙建物の独立性を認める理由とはならないというべきである。)。

以上のような乙建物の築造当時の状況に照らしてみると、同建物はその構造上も甲建物に完全に接合し、これと一体となって利用され、取引されるべきものというべきであって、何ら建物としての独立性を有しないから、建物の区分所有に関する法律(以下「区分所有法」という。)一条に該当せず、甲建物に附合したものというべきである。そうすると、このような乙建物について高橋の申請のままに区分所有権の成立を認め、その旨の登記手続をした本件処分は実体的法律関係に背反し、違法である。

(2) 仮に乙建物にその築造当時建物としての独立性が認められたとしても、本件処分には、不登法九三条の六第一項、同法九三条一項に違反する違法がある。

すなわち、本件のように、従前の甲乙建物の障壁が除去されて両建物が合棟ないし合体したと認められる場合には、甲乙両建物はそれぞれ物としての同一性は持続しつつ、丙建物という一個の建物を組成してこれに移行し、同建物について単一の所有権が構成されるに至ったものであるから、民法の附合の規定を適用してこのような場合の実体的法律関係を決すべきである。

しかるときは、

ア 甲乙各建物の所有者が同一であった場合は、丙建物はその者の所有となり、その所有者が異なるときは、民法二四四条に従い丙建物は合体当時の甲乙各建物の価格割合に応じて従前の各所有者の共有に属する。

イ 甲乙各建物の上に存していた抵当権は、合体後の両建物全体につき効力を有するに至るが(民法三七〇条)、民法二四四条、二四七条二項の類推適用によりもと甲建物の価格に応じる共有持分相当部分と、もと乙建物の価格に応じる共有持分相当部分との上に移行し存続する。甲乙各建物の一方のみに抵当権が存していた場合には、抵当権は合体後の丙建物全体に及ぶ。

以上のように解すべきであるから、甲建物の所有権及びその上にある本件根抵当権設定登記は消滅していないものと解すべきである。したがって、甲、乙各建物について滅失登記手続をするのは違法である。

(3) しかし、合棟の場合に建物の状況の変化の事実を登記手続上反映させるため、甲、乙各建物の滅失登記及び丙建物の表示登記の各手続を便宜上準用することが許されるとしても、単に滅失登記のみで処理することとした場合には、本件のように既存建物の抵当権者は全く不知の間に抵当権の対抗力を失わしめられ、回復し難い不測の損害を被ることとなるのであり、取引に及ぼす混乱は甚大である。したがって、抵当権者等利害関係人の保護を図った手続がされるべきである。しかるときは、不登法一四六条を準用し、合棟による滅失登記手続をするについても、抵当権者の承諾書の添付を要求すべきである。この場合、当該建物につき所有権が移転していたときに保存登記を抹消するには、現在の登記名義人(合体の登記の申請人)に抹消登記の代位申請を認めることにより解決することが可能である。

しかるに、被告は、このような手続を行うことなく本件処分を行い、もって原告の権利を侵害したものであるから、右処分は違憲、違法である。

4. なお、請求の趣旨第1項の訴えは、適法である。本件処分は合併としてされたものであれ、区分建物の合体としてされたものであれ、旧建物の滅失登記と新建物の表示登記とは一体としてなされるべきものであって、新建物の表示登記がされたにもかかわらず、旧建物の表示登記が同一土地上に残存するような事態を許容することは、当該土地上の建物の物理的現況を正確に示すという表示登記制度の趣旨を没却することになるのである。また、旧建物の滅失登記が回復されながら、新建物についての表示登記が残存するとすれば、旧建物にある根抵当権の実行の際、競売の対象物件を不動産公示手段との関係で特定できず、また、競落人の所有権取得範囲でも複雑な問題を生じ、ひいて競売手続が不可能となることも予想されるのである。更に、新建物の表示登記が残存すれば、仮に新建物の滅失登記を回復しても、合法的に存在する新建物の表示登記を信頼して保存登記等の権利の登記が積み重ねられる惧れがあり、これら権利者によって新建物の取壊しすなわち旧建物の取壊しさえされる可能性がある。以上のとおり、本件表示登記の存在は原告の地位に重大な法的影響を及ぼすから、請求の趣旨第1項の訴えは適法なものというべきである。

5. よって、原告は、請求の趣旨のとおりの判決を求める。

二、請求原因事実の認否

1. 請求原因1の事実中、本件根抵当権設定契約の締結については不知。その余の同項の事実を認める。

2. 同2の事実中、本件根抵当権設定登記の消滅について

原告が不知であったことについては不知。その余の同項の事実を認める。

3. その余の主張は争う。

三、被告の主張

1. 本件処分は、区分建物の合体を原因としてされたものであり、登記簿上の、本件処分が「合併」を原因としてされた旨の記載は、「合体」の誤記である。

2. 乙建物は、既存の甲建物の南西部分の、甲建物の障壁に接着して増築された南側一・八二メートル、西側二・七七メートル、床面積五・〇六メートル、全体としてL字型の木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建の建築部分である。乙建物と甲建物との間には障壁があって両建物を区分しており、乙建物の出入口は甲建物とは別に設けられていて、両建物の往来は、いったん外へ出てからでないとできない状態にあった。乙建物は、居宅である甲建物とは異なって事務所として利用されていたもので、水道設備等はなかったが、電気設備は設置されていた。乙建物は、事務机等を置くには相応の面積であり、事務所として十分独立した利用価値を有していたものである。

したがって、乙建物は、区分所有建物成立の要件である構造上及び利用上の独立性を満たしていたものというべきである。

原告は、乙建物に水道設備等のないことや公道への固有の出入口のないこと等から事務所として独立の利用価値がないと主張するが、水道設備の存することが事務所にとって不可欠の要素とは考えられないうえ、このような設備は容易に設置できるものであって、これを欠くことをもって独立した利用価値がないとはいえないし、このことは公道への出入口の点についても同様である。

3. 登記されている甲建物及び乙建物は、本件合体工事により乙建物の出入口が閉鎖され、甲建物と乙建物の接続部分の板壁が取り除かれたため、それぞれ新たな一個の丙建物となって、その独立性を失い、独立した一個の建物として所有権の客体となるには適しないこととなった一方、新たに一個の独立した建物として丙建物が生じたものとみるべきであるから、丙建物は、法律上合体後の甲建物及び乙建物とは別個の建物である。したがって、甲建物及び乙建物は、合体することにより法律上滅失したものであるから、滅失登記手続をすべきであり、丙建物については表示登記手続をすべきであるから、本件処分に違法はない。

4. 原告は、合体の場合に滅失登記手続を準用するとしても、甲建物の登記簿上の利害関係人である原告に対し何ら事情の告知又は意見を述べる機会を与えるなどの手続を経ることなく、同建物につき区分建物抹消登記をし、登記簿の閉鎖をしたのは違法であると主張する。

しかしながら、右の主張は、立法論としてはともかく、現行法の解釈論としては到底採用できないものである。

仮に原告主張のように、当事者の申請による場合には、合棟等を登記原因とする既存各建物の所有権保存登記の抹消登記の申請を要し、右申請に際し、所有者は抵当権者の承諾書を添付しなければならない(不登法一四六条一項)とすると、表示の登記である滅失登記をするのに、権利の登記である所有権保存登記を抹消しなければならないこととなって、表示の登記と権利の登記とを峻別する法の趣旨と相容れない結果となる。

また、右のような処理方法を認めるとした場合、抵当権者はどのような事由があれば承諾義務を負うのか、所有権が転々としている場合に、登記簿上の最終所有名義人が所有権保存登記を申請できるのか、できるとすればその根拠は何か等の問題が何ら解決されていないのである。

更に、原告は、乙建物にも抵当権がある場合、又は甲乙各建物の所有者が異なる場合には、甲建物上の抵当権は、甲及び乙各建物の価格の割合に応じて丙建物の持分上に移行すると主張するが、登記官が右価格の割合をどのようにして把握するのかという問題が全く解決されていないのである。

以上のとおり、現行法の下においては、

原告の被った損害は、やむを得ない反射的な結果に過ぎないものといわざるを得ないのである。

5. 原告は本件処分の違憲をいうが、本件において原告の根抵当権が対抗力を失ったのは被告が滅失登記をしたからではなく、合体によって甲建物が法律上滅失したからである。したがって、滅失登記処分をするにつき原告に告知、聴聞の機会を与えなかったからといって、憲法に違反するものではない。

また、丙建物の登記簿上に原告の根抵当権の従前の順位による対抗力を保障する処置をとらなかったからといって、それによって原告の権利を剥奪するものではないから、憲法とは何の関係もないというべきである。

第三、証拠〈省略〉

理由

一、(請求の趣旨第1項の訴えについて)

請求の趣旨第1項の訴えは、同第2項の請求に基づき、本件抹消登記が取り消され、甲建物の滅失登記が回復されて、原告の本件根抵当権設定登記が回復されれば、原告の目的が達せられる以上、丙建物の表示登記の取消しを求めるについて原告に法律上の利害関係がないものといわざるをえないから、不適法というべきである。原告が、法律上の利益があるとして主張するところは、あるいは法律上別個独立の処分である滅失登記と表示登記とを一体であるとする独自の見解に基づくものであるか、あるいは、丙建物について表示登記が存することによって生ずるものではない事実上の不利益をいうに過ぎないものであるから、いずれもこれを採用することができないというべきである。

二、(請求原因事実について)

1. 請求原因1の事実中、原告が昭和五二年三月八日大翔との間において信用組合取引契約を締結し、同年一二月三一日同社に対する債権担保の為高橋所有の本件旧建物及び本件敷地に本件根抵当権設定契約を締結したことは、証人柴橋英二の証言によって真正に成立したと認める甲第八号証、成立に争いのない甲第九号証及び同証人の証言によってこれを認めることができ、同項のその余の事実は、当事者間に争いがない。

2. 請求原因2の事実中、本件処分による本件根抵当権設定登記の消滅が原告不知の間に生じたことについては、証人柴橋英二の証言によりこれを認めることができ、右認定に反する甲第一八号証の六(その成立は当事者間に争いない。)の記載は、証人渡辺忠の証言に照らして到底措信できない。同項のその余の事実は、当事者間に争いがない。

三、(本件処分の原因事由について)

本件処分は、登記簿(成立に争いのない甲第二号証、第三号証)上「合併」を原因としてされたもののように記載され、原告はその違法をいうが、成立に争いのない甲第一号証の記載及び本件処分の趣旨によれば、右の記載は区分建物の「合体」の誤記であることが明らかである。したがって、「合併」を原因事由とすることを前提とする原告の主張は、理由がないことに帰する。

四、(乙建物の区分所有建物としての表示登記について)

1. 証人柴橋英二の証言により本件各建物の写真であることの認められる甲第六号証の一ないし三、成立に争いのない甲第一七号証の八ないし一〇、第一八号証の七及び第一九号証の四、証人高橋忠雄(後記措信しない部分を除く。)同小川茂利及び同高橋富雄(後記措信しない部分を除く。)の各証言並びに当裁判所の検証の結果を総合すると、次の事実を認めることができる。

(一)  乙建物は、別紙図面記載のとおり、甲建物の西側部分に突き出していた三畳間の西側部分のほぼ全部と、北側部分全部に接着して、その回廊のような形で建てられていた。基礎は甲建物とは別個にコンクリートブロックをもって作られ、屋根も亜鉛メッキ鋼板で葺かれていたが、外壁及び床には石こうボード様のものを貼っており、甲建物との間の障壁は、甲建物の外壁の上にベニヤ板を張っただけのものであった。ガスや水道の設備はなく、電燈は引かれていたものの甲建物から電線を引いていて、独立の配電盤はなかった。乙建物の回廊の様な形をした東西に延びる部分の幅は一メートル四二センチ程度、南北に延びる部分の幅は八一センチメートル程度で、総面積は約五・三一平方メートルであった。乙建物には土間を設けた独立の出入口はなく、西側に設けられていたサッシュの両開き引戸を利用して庭づたいに公道へ至ることはできたが、右サッシュ窓には外塀が迫っていて出入りに充分の間隔はなく、これを利用する出入りは必ずしも容易ではなかった。

(二)  高橋忠雄は右のような状態の乙建物を築造のうえ、土地家屋調査士岩倉栄(補助者小川茂利)をして乙建物の測量図を作成させたうえ、昭和五六年一月二三日乙建物の用途を自己使用のための事務所として区分所有建物の表示登記申請をし、その旨の登記手続を経たうえ、甲建物、乙建物間の隔壁を除去して、右申請のわずか約七か月の後に区分建物合体による甲、乙各建物の滅失登記及び丙建物の表示登記の各手続の申請をしたものである。

以上のとおり認められ、証人高橋忠雄、同高橋富雄の各証言中右認定に反する部分は措信できない。

2. 右認定事実によれば、乙建物は、その構造において一応甲建物とは別個のものと観念できないではないが、その東側外壁はもっぱら甲建物の外壁に依存して、その上にベニヤ板を貼っただけのものであり、出入りも、サッシュ引戸を利用して外壁との狭い区間からしなければならず、その形状も回廊状のL字型をなし、独立の区分所有建物としてはいかにも奇妙かつ不完全なものであって、床面積からしても事務所としての使用に耐えるとは考えられないうえに、独立に電気も引かれず、もとよりガス、水道の設置もないものであって、仮設建物としての域をそれ程出るものとはいえず、区分所有の事務所として取引の対象としうるものとは到底いえないものというべきであって、これをもって区分所有建物成立の要件としての構造上及び利用上の独立性のあるものということはできないといわなければならない。

そうすると、不登法上乙建物は甲建物の附属建物として以上の評価を受けることはないものというべきであるから、甲建物と乙建物との間の隔壁を除去しこれを一体とした場合には、乙建物は甲建物に附合し、その一部となって、甲建物の床面積が増加することとなるに過ぎなかったものというべきである。

3. そうであるとすれば、乙建物につき区分所有建物としての表示登記をし、甲、乙各建物の合体があったものとして、甲建物につき本件抹消登記をした手続は違法であるというべきであるから、甲建物についてした本件抹消登記はこれを取り消すべきである。

五、(結論)

よって、原告の請求の趣旨に係る訴えのうち、第1項の訴えは不適法であるからこれを却下し、第2項の請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宍戸達徳 裁判官 中込秀樹 小磯武男)

〈以下省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例